退職代行業者から通知が届いたら?
最近,退職代行業者から通知が届いた,というご相談が相次いでいます。対応にあたって気をつけるべきことをまとめてみました。
退職代行は,従業員の代わりに,退職の意思を会社に伝えるサービスです。心理的に自分で退職の意思を伝えにくい,会社から引き留められたら困る,と考える人が多いのか,このサービスを利用する人が急増しています。
退職代行は,弁護士資格を持たない民間業者がサービス提供をしていることが多いです。以下では,弁護士資格を持たない退職代行業者を念頭にご説明します。弁護士や合同労組(ユニオン)が退職代行を扱っているケースがありますが,この場合は,以下とは異なる対応が必要になる場合がありますので,対応を弁護士にご相談ください。
1 書類の確認
届いた書類の内容を確認します。退職代行業者からの通知に加えて,従業員本人がサインした退職届があれば受理して構いませんが,ない場合には,退職届を提出するよう求めます。退職にあたり提出を求めている書類(秘密保持の誓約書等)などがあれば,これも提出を求めます(ただし,こちらは実際に提出されるかどうかは別問題です)。
2 貸与物の返還請求
会社から貸与している物があるか確認し,ある場合には返還を求めます。
3 引継ぎと有給休暇
担当していた業務の内容を確認し,引継ぎをさせる必要があるか検討します。退職代行を利用するような従業員は,その後出勤はしたくないと考えているのが通常でしょうから,退職日まで有給休暇を消化したいという申し入れがなされることが多いです。ほとんどの会社の就業規則には,退職するまでに会社の指示に従い必要な業務引継をしなければならない,という定めがありますので,この規定を示して引継を指示するのか,有給休暇の消化を認めるのかを検討します。
4 誰に対して連絡をとるのか
民間業者は弁護士資格を持ちませんので,退職やこれに関連する事項について会社と交渉を行うことは弁護士法違反となります。民間業者が行いうるのは,あくまで伝達にすぎません。
退職代行業者からの通知文には,「書類は本人に送ってもらって構わないが,電話やメールは業者あてにしてほしい」という文言が入っていることが多いです。しかし,会社は必ずしもこの要望に従う必要はありません。特に業務引継について指示がある場合や,退職日・有給休暇の消化について交渉しなければならない場合など,必要性に応じて従業員に連絡をとっても問題ありません。 ただし,従業員が退職代行サービスを利用した背景には,注意を払っておく必要があります。たとえば,上司からのハラスメントが疑われる事情があるのに,その上司から従業員に直接電話をして,業務の引継について話をさせるなどすることは,新たなハラスメントとなりえます。
5 最後に
従業員に退職代行を利用された場合,ハラスメントなど労働環境に何らかの問題があった可能性があります。「近頃の若者は・・・」の一言で片付けてしまわず,なぜ退職代行を利用されたのかを探り,労働環境を見直すきっかけにできるとよいですね。
以上