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問題社員の退職を促すため遠隔地に転勤させることはできる?

 問題社員であっても,従業員を解雇するのがなかなか難しいことは,一般的にも知られるようになってきました。

 そこで一計。遠隔地への転勤を命じたら,自ら退職してくれるのではないか。

 日本では,使用者の解雇権の行使がきびしく制限されていることの裏返しとして,使用者に配置転換を比較的広く認めているといわれています(就業規則や雇用契約書において「配置転換を命ずることがある」などの定めがあることが前提です)。

 このようなお話をすると,「じゃあ,辞めさせたい従業員は,解雇するのではなくて,遠い営業所への転勤を命じたら,嫌がって辞めてくれるんじゃないか」という反応をいただくことがあります。

 しかし,配置転換を無制限に命じることができるというわけではありません。業務上の必要性がない場合や,必要性がある場合であっても,不当な動機・目的をもってなされたとき,または労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときなど特段の事情がある場合には,配転命令は権利濫用として無効となります。

 業務上の必要性については,過去の裁判例でも比較的緩やかに解されています。不当な動機・目的をもってなされたかどうかは,使用者側がそうですと認めることはまずありませんので,労使間でトラブル・紛争があったかなどの周辺事情から判断されることになります。「もめているから遠くにとばす」となると,不当な動機・目的があったと判断される可能性があるでしょう。

 また,家族の育児・介護,健康状態,キャリア形成への期待などから,「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益」があるかどうかが判断されます。
 この点,育児・介護休業法26条で,転勤を命ずる場合には,育児や介護の状況に配慮しなければならないと定められており,また,労働契約法3条が,労働契約の締結・変更において仕事と生活の調和に配慮すべきと定めています。
ワーク・ライフ・バランスの考え方が浸透していくにつれて,転勤を伴う配置転換については使用者側に慎重な対応が求められていくのではないでしょうか。
最近出された判決では,20年以上働いた北九州市から福島市への転勤を命じた事案において,家族の状況や本人の健康状態,キャリア形成等について特に問題とせず,異動そのものを著しい不利益と判断していました(福岡地裁小倉支部令和5年9月19日判決)。

 このような観点からしても,「退職に追い込むための転勤命令」は,得策とはいえなさそうです。

以上

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